油揚げが爆ぜる音

ゆるふわノンフィクションの暴力

全部朝が寒いのが悪い

 真冬の早朝は地獄だ。身を刺す寒さをライフジャケットのような防寒着で防ぎ、肌を隠せるだけ隠したとしても、寒い。毒沼を渡ってスリップダメージを受け続けるようなもので、朝からHPバーは黄色だ。

 通勤・通学のラッシュアワーを少し過ぎ、自分以外に10人も乗っていないだろう路線バスに乗る。僕の通学は、そのようなルーティンワークの積み重ねで出来ていた。

 大学の向かい側に高校があるので、七時台のバスには制服を着た高校生もいる。彼らは参考書片手に、同じ車両に乗り合わせたサラリーマンと同じような物憂げな顔をしていた。誰だって朝はキツい。布団からの誘惑を跳ね除けるだけでHPの半分を消費しかねないような寒さなのが悪いのだ。

 ブザーが鳴り、ブレーキが掛かる。バスはスピードを落とし、乗客のほとんどを吐き出すバス停に停まる。

 僕はスロープの用意をしてもらっている間にスマートフォンをスリープさせ、順番を待った。いつも最初に乗り、最後に降りる。その方が周りもスムーズなのだ。

 運転手さんにお礼を言い、バスを降りるそこから大学までは5分ほど歩く必要があった。寒さに身を竦めながらふと足元を見ると、乗降口に見慣れないものが落ちている。いや、厳密に言えば、何回かはお世話になったものだ。

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 誰だHPの4分の1削ったの。

 

 気持ちはわかる。誰だって朝はキツい。クリアアサヒが家で冷えてることに嫉妬するレベルで寒いのだ。お前は外で冷えてろ!!

 だとしても、今のHPは既に黄色バーだ。音系の技をくらえば即瀕死になるレベルでギリギリの状態だ。まだ始業時間でもないのに瀕死って……

 

 みがわりは頼りになる技だ。だが、使いどころに注意する必要がある。オボンのみでの疲労回復を忘れずにしないといけない、そう確信した寒い朝だった。