油揚げが爆ぜる音

ゆるふわノンフィクションの暴力

『若さ』という愛らしくも恐ろしい魔物

タワー・オブ・テラーの前の道にはちょっとした噴水がある。
f:id:fox_0829:20160520213911j:image (画像は拾い物)
ランダムな、それでいて規則的に吹き出す水はそこを歩く人に涼やかな安らぎを与えている。

木曜の僕は修学旅行中で、噴水の前でクラッシュ・アイスを嗜んでいた。アトラクションの連続に疲れた班のメンバーはベンチに座り、『ファンタズミック!』までの待ち時間を人間観察に勤しんでいる。

幼い少女が目の前を通り、時計のような規則性で吹き出す水の間を縫っていく。
平日の夕方にわざわざ遊びに来たリア充が、中央の水が出ない安全地帯で記念写真を撮っている。

沈んでいく夕陽が汽船に重なる、穏やかな黄昏時だった。

白のポロシャツに学生服のズボンを履いた一団(以下、本職と呼ぶ)が噴水の前を度胸試しのように走り抜けていく。
修学旅行中の中学生だろうか。本職たちは生き生きとした表情でふざけ合いながら、僕たちの前を何往復もしていく。
リズミカルに天に昇る水流、勢いを失い落ちていく水滴。まるで地雷原を軽快に駆けていくような彼らの姿に、涼やかなカーテンが重なってとても美しく感じた。ちょうど僕が食べているグァバのアイスのように甘酸っぱい青春の一ページだ。

「若いっていいなぁ……」

僕の口からため息のように出た言葉がコレだ。まだ十八にも満たないガキが何を言うんだ、と皆さんは笑うかもしれない。しかし、僕には到底できない事を彼らは軽々とこなしているのだ。嫉妬に似た感情を抱いていたのかもしれない。

本職たちは自分の服がグショグショに濡れる事なんて微塵も考えてないだろう。今のひと時を仲間たちと楽しむために全力なんだろう。後先を考えずに刹那的な楽しみを享受する姿が、いつの間にか損得で動くようになった僕の汚れた姿と重なって、不思議とそんな言葉がこぼれ落ちたのだ。

「若さとは振り向かないこと」だと、どこかの宇宙刑事も言っていたはずである。打算や駆け引きなど皆無な彼らの姿。うん、お兄さん的にはそのままの姿でいて欲しいな。そんな言葉が僕の口から出るのは時間の問題だった。

「おい、何やってんだよっ!!」

「やべぇ、拾え!!」

本職が急に焦りだす。どうやら誰かが悪ふざけで安全地帯にカバンを置き、それを回収しようとしているのだろう。幸いにも水は出ていない。猶予は十秒程ある!今なら無傷で間に合うッ!

彼らが噴水に足を踏み入れた瞬間、突如地雷は牙を剥いた。凄まじい勢いで吹き出す水。しかも一箇所ではなく、全スポットから。本職のポロシャツが透けだし、周囲は爆笑に包まれる。

しかし、彼らの顔は不思議と爽やかさに満ちていたのである。ちょうどグァバ味のような爽やかさが。

僕は決めた。

そうだ、はてなブログ始めよう。スベってもいい。この面白さを誰かと共有しよう。一時の面白さに、身を委ねてみよう。

そんな理由ではてなブログはじめます。


余談ながら、その時にアイスを車イスのクッションに落としたみたいで、こっちのズボンもグチョグチョになってました。ジーザス。